So-net無料ブログ作成
検索選択
ベルク:協奏曲 ブログトップ

ベルク:ヴァイオリン協奏曲(ある天使の思い出に) [ベルク:協奏曲]

たくさんです。主よ、御心にかなうのなら、

わたしのいましめをといてください。

我がイエスが来ます。

では、おやすみ、おお、世界よ!

私は天にある家に渡ってゆく。

私は平穏をもって安らかに往く。

私の大きな苦悩はこの下界に残る。

たくさんです!たくさんです!

(吉田秀和著『私の好きな曲』より引用)

 ベルクが引用したバッハのコラールである。

 ベルクは、シェーンベルク、ウェーベルンとともに、新ウィーン楽派と呼ばれる「十二音技法」による音楽の旗手である。

 ベルクといえば『ヴォツェック』。恐るべき遅速の作曲家でもあり、彼が遺した作品は数少ない(何せ、曲数が少ないことを恥ずかしく思って、作品番号をとってしまったというのだ)。歌劇『ルルー』の作曲には7年もかかり、結局最終幕のオーケストレーションの途中で、このヴァイオリン協奏曲を書いた。

 このヴァイオリン協奏曲は驚異的な速さで書き上げられたという。その動機は彼の愛する女性の死である。

 彼はグスタフ・マーラーの未亡人であったアルマと建築家グロピウスの間に生まれたマノンという娘を愛していた。

 しかし、マノンは19歳という若さで小児麻痺による神経中枢の損傷によって死んでしまう。

 ベルクがマノンの思い出のために書いたのが、このヴァイオリン協奏曲というわけだ。

 新ウィーン楽派の音楽だから、と小難しい音楽に感じられる方も多いだろうが、私にはベルクは調性音楽に最後までしがみついていたロマン気質の作曲家に思える。

 この音楽にこめられた精神の破滅と慟哭の激しさは、冒頭に引用したバッハのコラールの祈りに集約されている。ベルクは二楽章において、このバッハのコラールをレクイエムのように絶妙に用いている。コラールの旋律が現れる際のはっとするほどの美しさには、新ウィーン楽派とヨーロッパ音楽の伝統とが見事に結実した瞬間のようにすら思う。

 演奏は、盟友ウェーべルンがオーケストラの指揮を務め、クラスナーというヴァイオリン奏者がソロを務めた1936年という古い録音を選ぶ。オーケストラはBBC交響楽団。

webernconductsberg.jpg

 ちょっと、これ以上の演奏は考えられない。何が凄いのか、ということも説明できないほどの演奏である。

 もはや音楽ではなくて、慟哭と祈りの結晶である、と言ったほうがふさわしかろう。

 残念ながら、有名なPhilipsからの復刻盤は持ち合わせていないので、このTestament盤との音質比較はできないのが残念。

 録音自体はクラスナーが所持していたアセテート盤が音源となっており、当時としては破格の高音質である。

 ちなみに、ベルクはこのヴァイオリン協奏曲を完成させた後、4ヶ月もせずに悪性の腫瘍が原因で逝去した。彼の大きな苦悩は、「ヴァイオリン協奏曲」という鎮魂歌として、永遠にこの下界に残ったのである。


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽
ベルク:協奏曲 ブログトップ
メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。