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一日でも長く生きて・・・ [朝比奈隆 (cond.)]

 18日ぶりの更新です。

 研究者の宿命で、春休みという期間は各種学会への研究発表応募、論文投稿などが目白押し。さらにいろいろイベントもあり、忙しくしていました。さらに、ここ何日か気持ちが沈みがちで、まるでBLOGを更新する気になれませんでした。

 それでも、音楽を全く聴かない日はなかった、うん。これが救いです。リハビリのつもりで、また少しずつ拙い文章を書いてみましょう。

 不思議なことに、ここ数ヶ月、私は朝比奈隆の世界にどっぷりつかっています。

 以前は興味はあっても、これほど入れ込むことはなかった。私の「朝比奈隆」初体験は、あの宇野功芳氏が絶賛されている1977年の大阪フィルとの「エロイカ」でした。

 この録音は様々な方が絶賛されているけれど、どこが良いのかさっぱりわからなかった。打楽器の音は団子状だし、弦もひなびていて頼りない。金管も平々凡々としていて、熱い指揮棒であっても、それについてこれないオーケストラの技術に苛立ちを覚えるだけでした。

 それが変わったのは、2001年7月のブルックナーの8番(EXTON)。この演奏がことに素晴らしく、朝比奈隆を一気に見直し、その後発売された1997年3月NHK交響楽団との伝説的演奏、ブルックナーの同曲でもって確信に変わった。

 しかしながら、朝比奈の録音はベートーヴェンやブルックナーが多く、当時の私はベートーヴェンのディスクを大量に所持しており、さらにはブルックナーには全く興味が湧かなかった。クナッパーツブッシュやシューリヒトの8番、9番は聴いても、である。

 ブルックナーの交響曲が少しずつ私の心に染みるようになって、「ああ、こういうことだったのか」という思いに変わったのは、朝比奈が日本で初めて成し遂げたブルックナーの交響曲全集(ジァン・ジァン盤)の中の交響曲第5番を聴いてから。あの終楽章のコーダの物凄さに圧倒され、スケルツォの愉しさに一気にしびれてしまった。

 彼のおかげで、ブルックナーの交響曲のうち、3番、5番、6番、8番、9番に強く惹かれるようになった。

 ちなみに、相変わらず、7番は苦手だ。各楽章の美しさには脱帽するのだが、一楽章、二楽章といわば緩徐楽章の美しさに浸っていると、三楽章ではそのムードからどこか突き抜けない情念のようなスケルツォが来て(もっとも私はこのスケルツォがことのほか好きである)、最後にはどう聴いても安っぽいとしか思えない安易な造形の四楽章が全てを台無しにしてくれる(ノヴァークでもハースでも同じ)。むーん、ブルックナー!

 閑話休題。

 岩のように荒削りでありながら、上流の清らかな川のせせらぎを思わせる繊細さを持つブルックナー。こんな凄い演奏をする日本人はどんな人間なのだろうかと考えうる限りの文献や雑誌にあたった。休みの日には中古CD店を回り、廃盤になったディスクを探し求めた。そして、そんな朝比奈熱がようやく私の心の中で形となり、私の中で朝比奈像のようなものが出来上がるきっかけとなった本に出会う。

 朝比奈隆、長生きこそ、最高の芸術.jpg

 今は絶版になった本であるが、長年朝比奈隆に付き添い、彼の姿を美しい写真に収めた木之下晃氏のエッセイである。

 「一日でも長く生きて、一回でも多く舞台に立つ」

 この言葉は研究者として生きる私の心にも突き刺さった。研究者の評価は業績の数である。「一日でも長く生きて、一つでも良い研究を残す」、これが研究者の道だ。

 そんなことを思い出したら、この朝比奈隆という巨人が妙に懐かしくなり、彼が作り出し、年を追うごとに追求していった音楽に対して心酔するようになった。 


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朝比奈隆:伝説のブルックナー、ジァン・ジァン盤全集 [朝比奈隆 (cond.)]

JJGD-2001.jpg

 以前のエントリーにも書いたが、私はブルックナーを敬愛しつつも、どこか近寄り難い感があって、積極的にCDを聴いたり、演奏会に行くことがなかった。

 ブルックナーという作曲家はどうも聴く人を選ぶようなところがあるのではないか?とすら感じていた。指揮者ブルーノ・ワルターと同じで、美しい節回しに魅力を感じつつも、どこかこの作曲家のスタイルに捉え難さを感じていた。

 ベートーヴェンやブラームスとも違うし、マーラーとも違う。

 もっとも、マーラー自身は自分の作曲の原点をブルックナーに置いており、弟子であり親友でもあったブルーノ・ワルターにもそのように語っている。これは、マーラーが交響曲第2番「復活」を書いていた当時の話(ブルーノ・ワルター著「ブルックナーとマーラー」)。

 では、ブルックナーは他に例のないような作曲家なのか?いや、そうではないでしょう。

 バッハをはじめとするバロック音楽の敬虔さや崇高さとシベリウスに聴くような音による自然描写のようなものが巧みに融合し、オルガン音楽的な音響世界を現出させるような作曲法とでもいえばいいのだろうか。さらにそこには、ベートーヴェンやモーツァルトやワーグナーといった錚々たる作曲家たちの音楽語法をしっかりと身に付けた、伝統を身に付けた作曲家の姿を感じる。

 ただ、「信仰告白」のような彼の音楽を聴くとき、一種不思議な安らぎと静かな興奮を覚えるのだが、どこかしら別世界に連れ去られそうな不安を抱かせるところが怖ろしい。それは、恐怖ではなく、この世ならぬ巨大なものに接する畏怖のような感情だ。

 しかし、もっと大きな温かい懐の中で、優しく抱かれるようなアプローチもあっていい。

 そのような経験を与えてくれたのが、朝比奈隆のブルックナーだった。

 朝比奈は日本で初めてブルックナーの交響曲全集を録音した巨匠であり、ブルックナーの音楽のこれほどまでの普及には彼の活躍があったことは周知の事実だろう。

 では、朝比奈が遺した一番最初の全集を実際に耳にされたことがある方はどれくらいいるのだろう。

 この数ヶ月、ブルックナーについて書こうと思ってから、随分様々な評論家の本やサイト、ブログを調べたけれども、ブルックナーの熱烈なファンの方や、朝比奈のファンの方を除いてはあまり大々的に採り上げられていない。

 ブルックナーといえば、クナッパーツブッシュ、シューリヒト、ヴァント、ヨッフムと名前が並ぶが、朝比奈の名はまだまだ世界的にポピュラーとは言えない。 

 吉田秀和氏は、最後までローカルな指揮者だったという趣旨の追悼文を書かれていたが、まさしくその通りだと思う。

 日本人が愛すればそれでよいこと。そして、最初の全集であるジァン・ジァン盤も聴きたい人が聴けばいいこと。

 私はそっと、この全集を愛でることに決めた。

 渋谷にあった前衛的なライヴ・ハウス。ジァン・ジァン。そこのオーナーが朝比奈のファンとなり、ブルックナーを愛するようになったことがこの全集録音を生んだ。この計画が軌道に乗るまでの録音技師・吉野金次氏の力も大きい。

 時は朝比奈全盛期。晩年のキャニオンやフォンテックに聴く、どこか枯れた演奏とは異なり、スコアの隅々にまでエネルギーが満ち溢れ、スコアの新鮮な読みと、大阪フィルの全力投球の情熱とが、荒削りで巌のようなブルックナーを体現している。

 洗練されず、無骨すぎるほど無骨であるが、美しいハーモニーや情感が聴かれ、深い祈りを感じる。

 後年の演奏とは全くの別物だろうが、私はこの全集を聴いて、ブルックナーがいっそう身近に感じられるようになり、指揮者朝比奈がいっそう好きになった。 

 CDは96年にジァン・ジァンが発売したものと、2000年にグリーン・ドアが復刻したものがある。前者は定価25000円。後者は39270円。ベートーヴェンの全作品集やグレン・グールドの全録音集がこれ以下の値段で買える時代に、怖ろしいほどの金額設定である。

 この金額のせいで、なかなかファンの耳に届かないのだとしたら、悲しいことだ。

 音質はどちらも鮮明で、臨場感がある。グリーン・ドア盤のほうが柔らか味があり、弱音部の鮮度も良い。さらにリハーサル・テイクも多く、これまで未発表だった8番の別テイクも収録されている。しかし、残念ながら、マスターには痛みがあるようで、具体例をあげれば、五番のスケルツォのように耳障りなノイズがある(ヘッドフォンで聴くと顕著)。(←と書いたのだが、これはどうも使うヘッドフォンによるようだ。)

 初出の盤は、音に硬さがあるものの、生々しい迫力があり、迫真のドラマがより如実に味わえる。若干の音の鮮度の悪さは否めないのが残念。耳障りなノイズ(どんなヘッドフォンを使うかによる)がない点を考えれば、こちらのほうが素直に聴きやすいかもしれない。

 さて、こういう問題に気が付くと、途端に私は行き止まりにぶつかったような気持ちになる。果たして、どちらがより自然な音なのか?マスター・テープに収められた音に近いのはどちらなのか?

 私は録音とかリマスタに関してもど素人なので、お聴きになられた方の判断をお伺いしたいところだ。マスターが痛んでいるのか?はたまた、新しいデジタル・リマスタによって、ノイズが生じるのか?

 (どうもヘッドフォンによっては、新リマスターに収録された音を思うように再生できない場合があるようで、それでノイズが生じることがあるようだ。ゼンハイザー系では全く問題なかった。それでも旧リマスターの音を好む)


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